第259回見学会報告

北条早雲(伊勢宗瑞)と伊豆狩野氏の戦い
― 柏久保城・大見城・狩野城 ―

実施日:平成29年1月21日(日)
天 候:曇り
参加者:26名
担当者:望月副会長、宮川理事

年明け第一弾の見学会は、北条早雲こと伊勢宗瑞にスポットを当てた関連城郭見学会を実施しました。当日は晴天とまでは行きませんでしたが、寒風も多少和らぎ、絶好の見学日和となりました。また、前日に伊豆の国市にある「アクシスかつらぎ」で行われたシンポジウム「韮山城をめぐる攻防」に参加され三島市内に宿泊、連日の参加となった強者の方々もおられました。
伊豆箱根鉄道修善寺駅にて、2名の参加者を掌握後に柏久保城登城口までマイクロバスで移動、城址への歩道は落ち葉等が多く歩きにくい場所もありましたが、容易に目的地に到達することができました。

柏久保城堀切

柏久保城の創築時期は判然としませんが、鎌倉幕府草創以来の御家人である狩野氏の出城として築かれたとされ、明応2年(1493)以降において反早雲派の狩野氏と対立の際、早雲が伊豆国平定のため、大見三人衆等に普請させたと考えられています。 望月副会長の現地説明で、「柏久保城に残る堀切や土塁は、西側と南側にしか見られないが、これは明らかに狩野氏からの攻撃を想定した縄張りで、北東側の深い谷の名称は新九郎谷と呼ばれている。」という説明に参加者は興味深めに聞き入っていました。柏久保城及び次の見学地の大見城からは、天気が良ければ富士山を眺望できる絶好の場所でもありますが、当日は残念ながら雲が多くその雄姿を見ることは出来ませんでした。
柏久保城の見学を終了し中伊豆の大見城に移動、「伊豆大見の郷 季多楽」という農産物直売所の駐車場にて下車、すぐ近くにある大見氏の館跡と言われる實成寺を見学後、隣接する諏訪神社の鳥居から大見城に向かいました。ここは以前、「中山間地域総合整備事業」の一環で農村公園として整備されていましたが、最近では人の手が入れられた形跡はなく、散策路にある橋は朽ち落ちる寸前であり、竪堀も崩落した場所が散見されるなど現地の状態はあまり良くありませんでした。

大見城現況

大見城は狩野川の支流である大見川と冷川の合流点の南側にある小山の頂を中心に築かれた城郭で、修善寺から冷川峠を通り、伊東に向かう街道を抑える要衝に位置し当初は東側に伊東氏、南側に狩野氏という伊勢宗瑞に敵対する国衆勢力の間にあって、宗瑞方の重要な戦略拠点であったことが窺えます。
明応6年(1497)、伊勢宗瑞方として大見三人衆(佐藤藤左衛門・梅原六郎左衛門・佐藤七郎左衛門)が大見城から出撃し、柏久保城を攻撃中の狩野方を背後から攻め退却を余儀なくさせるとともに、同年には大見城に籠城したことが文献に残されています。重厚な縄張りとは言えませんが、前述の大見三人衆が立て籠もるにはコンパクトで理に適った城郭だったことを現地見学を通しての印象でした。

狩野城主郭

大見城で昼食後、本日のメインである狩野城に向け移動、狩野城は修善寺から天城湯ヶ島に至る狩野川流域を本拠としていた狩野氏が築いた城郭とされ、狩野荘のほぼ中央の下田街道を見下ろす丘陵上にあり、築城時期については判然としませんが、15世紀後半と考えられています。現在の狩野城は、地元ボランテアの手により遊歩道の整備が行われ、立ち木もほどよく伐採され、遺構の観察もしやすくなっており、また随所に狩野城をアピールする幟旗が立てられていました。また城の遺構は埋蔵文化財包含地として登録され、さらに伊豆市の指定史跡となっています。

狩野城二重堀切

遺構は、柿木川と狩野川に挟まれた、標高180m、比高80m程の城山の山頂部付近の尾根沿いに展開しており、特に西南部には技巧的な土塁や空堀で構成された曲輪が目立ち、また尾根の南東部末端に位置する二重堀切は素晴らしいものでした。その他に主曲輪と考えられる平坦地には廃屋と化した御堂があり、その南側には、かなり高く櫓台と思しき遺構が残っており狩野城の最高所となっていました。見学の最中に会員の方々と狩野城の年代観について意見交換し、特に前述の二重堀切の年代観については色々な意見を拝聴でき有意義な時間となりました。また狩野城見学終了直前に、参加者数名が縄張図に記載のない遺構らしきものを発見され、今後の遺構精査の必要性を感じた次第です。

韮山城堀切

本来ならば見学会スケジュールは狩野城で終了予定でしたが、時間的余裕が出来たので、遺構整備が続く韮山城の三重堀切と土手和田砦の見学を実施しました。両遺構とも、最近までは藪が生い茂り人の立ち入りを拒むような状態でしたが、「韮山城を復元する会」の方々のご尽力により、藪が切り開かれて普段見ることのできない土手和田砦の遺構や圧巻ともいえる韮山城三重堀切に参加者一同興味深めに見学していました。

今回、北条早雲(伊勢宗瑞)シリーズの第一弾という位置付けで見学会を実施しました。来年度に同シリーズの第二弾見学会の実施を企画検討中でありますので、ご期待頂ければと思います。(文責:宮川茂美)