第35回全国城郭研究者セミナー報告

8月4日(土)・5日(日)、中世城郭研究会主催の第35回全国城郭研究者セミナーが、お隣の愛知県豊橋市公会堂で開催されました。当会からも、水野会長・川村副会長以下多くの会員が参加しました。

 1日目の8月4日(土)の午前中は、セミナーに先立ち豊橋市文化財センター主催の「『三河の城』報告会」が開催されました。これは近くの豊橋市美術博物館で開催中の企画展「みかわの城-吉田城と天下人-」の関連企画で、松田繁氏の「蒲郡の城館」、岩原剛氏の「吉田城の考古学」、高田徹氏の「豊橋付近の城を歩く、見る、考えてみる」の3つの報告が行われました。いずれも最新の縄張研究、考古学的調査の成果を盛り込んだ興味深い報告でした。

セミナーは午後1時30分から開会となりました。1日目は各研究者からの調査・研究報告ということで、奥田敏春氏の「三河幡豆郡の城館-吉良氏と地域-」、遠藤啓輔氏の「密集した小規模方形郭群の事例紹介と検討-近畿地方の中世遺跡を中心に-」、濱野浩美氏の「史跡米子城跡の最新発掘調査成果」、田上和彦氏の「富山県高岡市高岡城跡詳細調査の成果について」の4本の報告がありました。前者の2本の報告は戦国期城館について主として縄張調査から得られた成果を報告したもので、後者の2本の報告は織豊期~江戸初期の城郭について考古学的調査の成果も交えた研究報告で、いずれも今後の調査・研究に大いに参考になるものでした。

 同日の午後6時からは、豊橋市役所の展望レストラン「こすたりかシティガーデン」で懇親会が盛大に行われ、吉田城跡を眼下に見下ろしながら例年にも増して城郭談義に花が咲きました。

 2日目の8月5日(日)は、今年のテーマ「馬出を考える-定義と分布-」についてシンポジウムが行われました。

 先ず各地における馬出の分布状況や形状等の事例について報告がありました。午前中は、東海地方(石川浩治氏)、北陸及び飛騨地方(佐伯哲也氏)、東北地方(室野秀文氏)、関東地方(山本浩之氏)の4地域の報告があり、昼食・休憩をはさんで午後には長野県・山梨県(甲信地方)(山下孝司氏)、近畿及び周辺(高橋成計氏)の2地域から報告がありました。その後約1時間30分にわたり、中世城郭研究会の三島正之氏・木地谷了一氏を司会に、各地域の報告者がパネリストとなって討論会が行われました。我々静岡県(遠江・駿河・伊豆)をフィールドとしている研究者にとっては、東海地方や関東地方、甲信地方の城郭にみられる馬出は目にする機会が多くあり、すぐイメージできるものでしたが、他地域のものについては縄張図や写真等で初めて目にするものも多く、非常に勉強になりました。馬出についてこのセミナーでとり上げるのは初めてということで、討論会も、海上からの発言も交えて、時間が足りなくなるほど様々な意見が出されました。その中で、島田市の諏訪原城の丸馬出についても言及され、発掘調査では二の曲輪の馬出が徳川期に設けられたとしているが果たしてそうなのか、などの問題提起もなされました。当会の水野会長からもこの件等について発言がありました。馬出についてはその定義や分布状況、発生の時期等、まだまだ考えさせられることが多くあり、今後一層の調査・研究の必要性を感じました。

なお、両日の休憩時間には図書交換も行われ、こちらも盛況でした。当会からも『古城』の第62号(最新号)を始めとする書籍を販売しましたが、『古城』第62号については会場で販売した分はおかげ様で完売となりました。お買い上げいただいた皆様、どうもありがとうございました。             (文責:望月 保宏)

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