平成29年度定期総会と「ふじのくに山城セミナー」の報告

平成29年度定期総会と第25回研究成果発表会「ふじのくに山城セミナー」を7月16日、静岡市清水区の清水テルサで開きました。

会員約40人が参加した定期総会では、28年度の事業報告と決算報告、29年度の事業計画案と予算案等を承認。29年度も「城郭の構造と運用を、楽しく学び・調べ・究めよう!」をスローガンに『縄張図集成』の編纂事業や県内外への見学会等に取り組むことを発表しました。『縄張図集成』編さん事業では、24年に発刊した駿河国版に続いて、遠江国版、伊豆国版の発刊に向けて調査、研究、執筆を推進することを確認しました。
水野会長はあいさつで「研究会を名乗る以上、『縄張図集成』の発刊が最優先事業となる」と強調。県西部で次々と城館跡が発見されつつも調査が進んでいない現況を示し、会員のさらなる協力や若手調査員の育成を呼びかけました。

総会後、一般者を加え約90人が聴講した「ふじのくに山城セミナー(研究成果発表会)」では、静岡市出身で大河ドラマ「おんな城主・直虎」の時代考証を務める大石泰史氏(大石プランニング主宰)が「室町以前の井伊氏―その系譜と文書から見た関連城郭―」をテーマに記念講演されたほか、会員3氏が研究成果を発表しました。

大石泰史氏の記念講演

大石氏は史料の記述や一族の名の変遷などから井伊氏の来歴や系譜を整理し、南朝や北朝、今川氏、斯波氏などとの関わりを解説。時代とともに変化する城郭の運用方法を明らかにされました。
系譜については、「良」「共」「直」といった通字の使われ方によって嫡家や庶家が入り交じる複雑な家督継承を解説しました。井伊氏の所領は三河と遠江の結節点にあり、舟運にも恵まれ、領内に分布する庶家も含め、かなりの経済力を持っていたことを説明されました。南北朝期から戦国期まで運用された三岳城については、井伊氏の本拠井伊谷からやや離れた位置にあり、嫡流がいなくなった後に南下してきた渋川井伊氏が使っていた可能性も指摘されました。
その上で「これまでは、嫡庶を視野に入れずに井伊氏を考察してきたが、今後はいろいろな系統の井伊氏がいたことを認知する必要がある」とまとめられました。

研究成果の発表では川村晃弘副会長、平井登事務局長、水野会長が登壇しました。

川村晃弘氏の発表

川村副会長は「宗長親王と駿遠の城郭」をテーマに発表。▽宗良親王と『李花集』の「暗号」▽南北朝期の「城郭」は「シロ」か▽天下分け目の井伊谷大戦」▽安部城と狩野介貞長▽宗良親王はいつ駿河に来たのか―といった視点で、駿遠両国を中心とした親王の動向や城郭との関わりをまとめた成果を関連の資料や写真を示しながら説明しました。

平井事務局長のテーマは「檜峠・菩提山中腹に謎の砦遺構を発見」。藤枝市滝沢と島田市伊久美の境をなす菩提山の中腹(標高570㍍)に、今年3月発見したばかりの城郭寺院遺構について写真を交えて紹介しました。今川氏の宰相・太原崇孚雪斎が開山したと伝わる菩提山領珠院跡地とその上に展開していた砦遺構について、縄張り構造から読み取れる運用を説明しました。

平井登氏の発表

特に、天正期を彷彿させる明確な横堀と土塁、その横堀に前後を挟まれた細長い曲輪と楕円状の窪みを狼煙場と捉え、また、食違い虎口西側斜面の土塁と横堀は高天神城や丸子城に通じる武田系城郭の技巧的な構造であると説明した。その上で、本遺構は武田末期における西駿河の山間奥地と志太平野の拠点城・田中城を結ぶ「繋ぎ城」であり「狼煙台」の蓋然性が高いとし、天正九年六月六日付の穴山信君書状に示された「峠普請」に該当する可能性を指摘しました。

水野茂氏の発表

水野会長は昨年に引き続き、『縄張図集成』編纂事業で調査を進めている森町にスポットを当て「山城から見る森町一宮地域の戦国史」をテーマに発表しました。太田川左岸の同地域に数多く存在する城郭の中から武田系の8カ城を厳選してスライドで紹介。森町一帯で5期にわたって繰り広げられた武田・徳川両氏の抗争を説明しました。一宮地域の城は大規模な駐屯地または曲輪を備えた二郭構造が特徴的で、同じく二郭構造の武田系城郭が集中する御前崎市新野地域と同様、高天神城への策源地化した蓋然性が高いと指摘。「勝頼の極めて広大で強力な軍事行動が読み取れる」と考察しました。

水野会長と平井事務局長の発表を詳しくまとめた論文、川村副会長の関連論文は同日発行した機関誌『古城』61号にも掲載していますのでご覧下さい。
(文責:金刺信行)

平成29年度「定期総会」と「ふじのくに山城セミナー」のご案内

定期総会と日頃の研究成果の発表の場であります「ふじのくに山城セミナー」のご案内です。今回のセミナーでは、まず記念講演として大河ドラマ「おんな城主・直虎」の時代考証担当者・大石泰史氏の井伊氏研究についてお話をいただきます。
続く会員3名の研究成果もたいへん興味深い内容ですので、どうぞご期待ください。
当日は、会員のみならず大勢の山城ファンにお集まりいただければ幸いです。

  • 日  時:平成29年7月16日 (日)  9時30分から受付・10時開会
  • 会  場:静岡市東部勤労者福祉センター「清水テルサ」6階 研修室(大)
    静岡市清水区島崎町223 TEL. 054-355-3111
  • 交 通:<電車> JR清水駅・東口より徒歩で約5分
    <駐車場> 清水テルサの有料立体大駐車場が利用できます。
  • 申込み:  参加申込みはこちら 締切日:7月13日(木)
  • 昼 食:各自ご持参ください。(同会館8階にレストランあります)
  • 徴 収:年会費(5,000円・会員の方)、
    〇ふじのくに山城セミナー資料代(1,000円)
  • 頒 布:機関誌『古城』第61号は、当日受付にて頒布します。

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駿河の戦国大名 今川氏展ご案内

藤枝市郷土博物館 開館30周年記念特別展

足利一門の名族・今川氏は南北朝時代から戦国時代にかけて約230年にわたり、守護大名、のちに戦国大名として駿河国及び遠江国を領有・支配しました。南北朝の動乱期に、足利尊氏に従って戦功を挙げた駿河今川氏の初代・範国と二代・範氏は、駿河・遠江における南朝方勢力を駆逐し、駿河国守護に任じられました。以後、今川氏は代々、駿河守護を歴任し、東海地方の名門大名として君臨します。七代・氏親の代には遠江国守護に任じられ、最晩年には「今川仮名目録」を制定し戦国大名として成長します。異母兄との家督争い「花蔵の乱」に勝利した九代・義元は三河国へ侵攻し、駿遠三3か国の戦国大名として強盛を誇りますが、永禄3年(1560)の桶狭間の戦いで織田信長に敗れ戦死します。最後の当主、十代・氏真は今川家の衰退を止められず、永禄12年、掛川城を退去し北条氏へ身を寄せたことで、戦国大名今川氏は滅亡しました。

本展では、静岡県内に残る今川氏ゆかりの古文書・歴史資料を展示し、今川氏の駿河支配の軌跡をたどります。駿河の南北朝動乱に関わる「駿河伊達家文書」(京都大学総合博物館所蔵)を県内初公開します。また、「花蔵の乱」に関する重要文書「岡部文書」(当館蔵)のほか、完成した花倉城(葉梨城)の城郭模型をお披露目します。今川氏歴代当主が発給した古文書の展示を通して、駿河今川氏十代の歴史を振り返ります。(藤枝市郷土博物館ホームページより)

日時:平成29年6月2日(金)~7月17日(月・祝日)午前9時~午後5時
※月曜日休館(7月17日は除く)

場所:藤枝市郷土博物館・文学館 藤枝市若王子500

機関誌「古城」第61号 投稿募集

日頃の研究成果、研究ノートをお寄せください。
機関誌『古城』第61号(2017.7.16発刊)の原稿を募集しています。
 『古城』投稿規定PDF

1.締め切りは5月末日です。
2.できるだけ電子データでの提出をお願いします。データはメールに添付をしていただければ助かりますが、CD、USBなどを郵送していただいても結構です(校正のとき返却)。原稿用紙(400字詰)手書きでも受け付けますが、その場合は早めに提出をお願いします。
3.第1稿の校正を郵送しますので、郵便番号、住所及び電話番号も明記ください。
4.割り付けもお願いします。図や表を何枚目に入れるか、わかるようにしてください。PDF添付か、プリントアウトを郵送してください。念のために、図・表を含めた総ページ数もお知らせください。
5.頁レイアウトは、縦書きの2段組みで各段30字×24行です。図・表を含め20ページ以内を目安にしてください。
6.郵送の場合 424-0818 静岡市清水区江尻町6-21 川村晃弘 宛
メールの場合 kawaki@mtg.biglobe.ne.jp まで

★お問い合わせは 川村携帯:090‐9222‐2305 まで

第256回見学会〈一泊二日〉ご案内

真田氏、沼田攻略の岩櫃城・名胡桃城をゆく

恒例の一泊二日見学会は、昨年の大河ドラマ「真田丸」ゆかりの城郭探訪となります。大河ドラマ「真田丸」では、弱小の戦国大名・真田一族の本領を守る智謀が見所になりました。二年前の「北信シリーズⅠ」で、真田家を存続させた真田信之の松代城(海津城)を訪ねていますが、今回は北関東の真田領であった沼田地方へ出掛けます。この地では、後北条氏との戦いで有利に戦い、秀吉の小田原征伐の切っ掛けとなった有名な名胡桃城をはじめ、最大拠点の岩櫃城も訪ねます。日本の戦国史上、これだけ名を馳せた真田一族の激戦地城郭の旅を、さわやかな季節の中で堪能したいと思います。

  • 実施日:平成29年5月13日(土) ・14日(日) *雨天決行
  • 見学先:群馬県沼田市・吾妻郡の城郭 〔脚力レベル: 3/5 ★★★☆☆〕
  • 募集数:28名(先着申込み順。定員になり次第締め切ります)
  • 参加費:25,000円(交通費・宿泊費・夕食費含む) ※当日バス内で集金
  • 乗り物:市沢バス〔出発地:静岡駅南口・セブンイレブン付近〕
  • 身支度:ハイキング(山登り)の服装と装備・弁当飲物類・雨具
  • 担当者:水野会長・小川理事
  • 申込み:募集定員になったため締め切りました
  • 締切り:5月2日(火)。メールには必要事項および乗降希望場所(静岡駅南口・東名高速IC・PA)を明記してください。

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